国際会議での研究紹介をきっかけに
神戸大学で進めているゼニゴケの食利用研究から生まれたレシピが、オーストラリアのARC Centre of Excellence in Plants for Space(Plants for Space)が制作したレシピブック『Plants for Space: Recipes for the Modern Space Cook』に掲載されました。
本書は、宇宙で植物を育て、食料やバイオ資源として活用する研究を、料理を通じて身近に紹介することを目的に制作されたものです。
ゼニゴケは、宇宙ステーションなどの閉鎖空間で発生する CO₂を高効率に利用でき、省スペース・低資源で栽培可能な植物として期待されています。2026年3月に開催されたCHIBADAI International Workshop on Space Agriculture and Horticulture 2026に神戸大学大学院理学研究科の石崎公庸教授が参加し、ゼニゴケの産業利用や将来的な宇宙での利用可能性について紹介したことがきっかけとなり、今回の掲載につながりました。
「食材としてのゼニゴケ」をどう料理するか―将来の宇宙での食利用を見据えて ―
レシピの考案は、神戸大学大学院人間発達環境学研究科の湯浅正洋准教授を中心に行い、以前、試食会を開催した日本料理店「雲鶴」様にもご協力いただきました。
レシピには、サラダやオムレツなどの洋食に加え、肉じゃがなど和のテイストを取り入れた料理も盛り込みました。また、単に「ゼニゴケをおいしく食べる」ことだけを目的とするのではなく、将来、次世代フードテックによって生産した培養肉などの新しい食材と組み合わせることも想定し、未来の宇宙食をイメージできるよう工夫しました。
食利用にあたっての安全性への配慮
神戸大学では現在、管理された環境下でのゼニゴケの栽培技術を開発するとともに、成分、調理特性、安全性などに関する研究を進めています。今回のレシピ作成でも、大学内の管理された環境で栽培したゼニゴケを使用しています。
身近な場所にもゼニゴケやそれに似たコケ植物が生育していますが、野外の植物については、種類の判別に加え、生育環境に由来する微生物や化学物質などの影響も考慮する必要があります。そのため、ゼニゴケの食利用については、安全性や社会受容性を含めた検討が必要であり、本レシピおよび神戸大学で進めている研究は、野外に自生するゼニゴケを採取して食べることを推奨するものではありません。
地球から宇宙まで、ゼニゴケの新しい可能性を探る
ゼニゴケは、限られた空間で効率よく栽培できることに加え、遺伝子改変が比較的容易であることから、これまで植物研究のモデル生物として広く利用されてきました。
神戸大学では、こうした特徴を生かし、ゼニゴケを新たな食資源として活用する可能性について研究するとともに、植物由来の有用物質を生産する「植物型バイオものづくり」の基盤として活用する取り組みも進めています。

今回のレシピブックへの掲載を一つのきっかけとして、ゼニゴケの食利用や宇宙環境での活用について、その可能性と課題の双方を検討しながら、国内外の研究者との連携を進めていきます。



